経営戦略原論 第12章

要約

 経営戦略の未来には3つの変化の可能性がある。経営における人の関与が小さくなること、個品開発・個品製造・個品販売が普及すること、取引相手が必ずしも人間ではなくなることの3つである。これら3つの変化は、相互に密接に絡み合っている。企業は、この変化に対応するために、現時点で必ずすべきことは、未来の変化が急速に進展した場合に備えた準備をすることである。未来における経営戦略は、現代における経営戦略が過去と異なるのと同様に、異なる。長期的に必要とされる改革を具体的に進める段階を迎えたとき、できる限り組織の形を迅速に調整できるよう、今から柔軟性を高めておく必要がある。

経営戦略原論 第11章

要約

 現代は第2次グローバル経済の最中にある。4つの経営環境の変化が、グローバル化の流れを加速させたのである。しかし、グローバル化が進む一方、世界の市場の異質性は依然として高く、世界市場は今、セミ・グローバリゼーションというグローバリゼーションが進行しつつも、それが完全には世界を一つの市場にしていない中間的な状態である。世界には市場の異質性が存在しており、これは困難であると同時に可能性である。確かに、多くの企業にとって、国際経営は依然として身近に感じられる方向性ではない。しかし、世界の各地の特性を理解し、これらを自社の活動にふさわしい形で組み上げ、それを絶えず刷新していくことが求められる時代が近づいている。

経営戦略原論 第10章

要約

 予測困難性、可鍛性、生存困難性のいずれかが高いと新興企業が生まれやすく、新興企業の多くが戦う事業環境では、シュンペーター型の競争が起きており、戦略検討の「定石」はそうした事業環境では不十分である。また、2000年代後半にかけて確立されたリーン・スタートアップは、仮説思考計画方と同様の考え方を戦略フレームワークとして広く伝播されせ、事業開発を「探索」と「実行」に切り分けた。探索では、市場との対話からプロダクト・マーケット・フィットを見出し、実行で行われる戦略検討は、グロースハックと呼ばれている。新興企業の戦略検討においては、段階的に全社戦略が事業戦略から独立しする。しかし、成長の過程で新興企業はその特性を失い、成熟企業へと変化する。

経営戦略原論 第9章

要約

 人間は、認知、情報処理、時間の制約から限定合理的だと考えられ、モニタリングとインセンティブは限定合理的な人間の行動を統制する手段である。また、新制度派組織論は、人間の認知を左右する組織フィールドの理解を深めた。さらに、組織フィールドを意図的に誘導する制度戦略という考え方が発展しつつある。また、現代はマネジメントからリーダーシップの時代に移り変わりつつあり、人工知能などの現在進行中の技術発展は、リーダーシップの重要性は、リーダーシップの重要性を高める。それは、人間の人間的な側面を理解し、それを導き、束ね、前に進める存在であり、その存在が経営戦略を実行に落とし込み、成果につなげていく。

 

経営戦略原論 第8章

要約

 管理会計は、経営戦略と同じく、1965年の書籍によって体系化され、1990年代に管理会計と経営戦略の距離が大きく縮まった。BSCやKPIの議論が、非財務的情報を財務情報と接合したことが転機点となったのである。また、BSIもKPIも、その導入にあたっては全社的な取り組みと、事業環境や組織構造の変化に合わせ、継続的な刷新が必要である。しかし、BSCは組織全体の数値管理を志向するのに対して、KPIは重要指標に焦点を当てている。また、複雑化した巨大組織では、各種事業を各事業、昨日、チーム、個人に因数分解し、突然の変化に対応すべく、本社主導の機動的経済資源導入も求められる。

経営戦略原論 第7章

要約

 全社戦略と事業戦略の境界は、外部環境と内部環境の分析という部分で大きな重なりがあるため、曖昧に見える。さらに、多くの企業にとって多角化企業を前提とした全社戦略の議論はなじみがないため、両者は混同されがちである。また、実務家的な視点から全社戦略に必要な要素を再定義するのであれば、それに必要な要素は、組織ドメインの定義・周知・更新、全社機能の戦略検討、事業領域の管理・再編、監査・評価・企業統治、の4つがある。そして、未来には、分散協調的に多数の組織体が動的に連携して事業を創造する可能性が高い。その場合、「全社」をどの把握し、どう戦略を検討するべきか、新たな議論が必要となる。

経営戦略原論 第6章

要約

 外部環境分析と内部環境分析を土台として、競争優位の確立と維持のための手段を議論するのが、事業戦略立案の議論の骨格である。日本では、競争優位の確立を議論する際、イノベーション研究とマーケティング研究の知見が色濃く反映される。また、戦略フレームワークには得意・不得意があり、自社がおかれた事業環境、自社の内部環境の特性に基づき取捨選択する必要がある。戦略フレームワークを使いこなすには、「自分の方法論の骨格」を保持することが重要であり、新興の産業や事業領域における事業戦略の検討にあたっては、「理解」と「判断」のみならず、「行動」の側面が無視できない。行動の過程で一度決められた判断がどのように左右されるかは、事業戦略研究の古典的分野でありながら、一つのフロンティアでもある。